毎年、私は実家の裏山で年を越すことにしている。
小さな火を焚き、30分ほどを過ごす。
当然ながらだれもいない。真っ暗である。しかし、市街と向かいの山を一望できるその場所からは、さまざまな人が新年を祝う花火が見えるのだった。
私はそれを見ながら、小瓶の酒をちびちび飲み、ぼんやりと過ごすのである。

今年の総括
今年は実り多い年だった。知的にかなり前進できた。
単に知識を身につけたということではなく、より自由になり、より多くの自己発展を果たしたと思う。
アナーキズムとの出会い
アナーキズムと出会ったことが大きな出来事だった。
私が自分をアナーキストだと認識したのは18年の1月。だから私はまだアナーキスト一年生だ。
日本では死んだ思想と思われがちのアナーキズムだが、海外では一定の影響力を持っている。2018年は主にAnarchist Libraryを読みふけった。特にインパクトが強かったのはユナボマーの「産業社会と未来(全文)」。他、著名なアナーキストであるジョン・ザーザン、ディヴィッド・グレーバー、ピーター・ゲルダルースにも影響を受けた。
今年読んだ著書の中では、James C. Scottの「ゾミア」のインパクトがもっとも大きかった。James C. Scott、たぶん後世に名を残すと思う。他、シュティルナーの「唯一者とその所有」、あとはたまたま図書館で手にした柄谷行人の「帝国の構造」も良かった。柄谷ってあまり知られていないがアナーキストなんだよね。
「国家」「文明」「技術」「家族」「道徳」。そういった「幽霊」をひとつひとつ丁寧に潰していったことで、自由に生きるようになった。
世界を殺してしまった
「自分を殺すか、世界を殺すか」
もっとも人生を憎んでいたときから好きだった言葉だ。
結局、まともな人間は現代社会と調和してやっていくことは不可能だ。世界を肯定するか、自己を肯定するか――これはトレード・オフであり、自分を肯定するということは、すなわち世界を否定すること。
10年ほど前、私は自分が惨めで最悪の存在だと思い込んで苦悩していた。他方、社会は完全に機能しているように思われた。周りの浮ついた連中(リア充)が羨ましかった。
現在では、私は自分が充足した存在だと感じている。かつて憧れた「社会適応者」は、なにか心を壊した薄ら寒い存在に見える。そして現代社会は完全に腐敗していると思う。
いま、私は貧乏で社会的地位の低い惨めな生活をしている。貯金は増えていない。高級車は持っていない。結婚もしていない。賃金労働をしている。「30歳までに作家になる」という夢は潰えた。
でも、私は自分を十分な幸福者だと感じている。
世界を殺して、自分を生かすことに決めたから。
これからも凡庸な人間になることはない。いつまでも少数の認識者として生きていこうと思う。
今後の展望

2019年をどういう年にしようか。
前々から考えていること。自分で何かを生産して直売したいと思っている。ブログという営みをマネタイズしたいけれども、アドセンスのように「だれか他人の商品を売る」のが嫌だ。とりあえず一冊でも著書を書いてみたい。
第二に、「セミリタイア生活」に移行したいと思っている。月々の支出を極限まで削ぎ落とし、ある程度著述で収入を得て、週16時間労働くらいで生きていけるようにする……。
少し世帯じみた? 願望を書いてしまった。私も三十路だから、遠い理想よりも近くの現実を見るようになってしまう。
……お前の信じているアナーキズムこそ「遠い理想」だろう、と言われるかも知れない。しかし、私にとってアナーキズムの方が現実的で、産業文明社会の方がはるかに遠いものなのである。

2019年も「齟齬」の更新は続けていく。ただ、2018年のようには頻繁に更新できないと思う。週に1度か2度くらいになるだろう。でも、ブログはずっと続けていきたいと思っている。
2018年、たくさんの支持、応援、感想、批判に感謝しています。読まれている――という事実だけで書いている甲斐があります。
それではみなさん良いお年を。
お腹がくちくなったら、眠り薬にどうぞ。
歴史探偵の気分になれるウェブ小説を知ってますか。 グーグルやスマホで「北円堂の秘密」とネット検索するとヒットし、小一時間で読めます。北円堂は古都奈良・興福寺の八角円堂です。 その1からラストまで無料です。夢殿と同じ八角形の北円堂を知らない人が多いですね。順に読めば歴史の扉が開き感動に包まれます。重複、 既読ならご免なさい。お仕事のリフレッシュや脳トレにも最適です。物語が観光地に絡むと興味が倍増します。平城京遷都を主導した聖武天皇の外祖父が登場します。古代の政治家の小説です。気が向いたらお読み下さいませ。(奈良のはじまりの歴史は面白いです。日本史の要ですね。)
読み通すには一頑張りが必要かも。
読めば日本史の盲点に気付くでしょう。
ネット小説も面白いです。